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ソウル [3/4]
5.電子王国を支えるサムスン電子の強さの秘訣とは
(1)日系電機業界への衝撃
 「昨年度のサムスン電子の純利益が1兆円を超えた。日本の電機業界が束になっても勝てない。時価総額も約6.5兆円に達し、松下やソニー等々を大きく引き離す。」今年1月に日経新聞が社説にも取り上げ、日本企業の巻き返しを期待する内容のものでした。
ソウル市内のサムスン本社ビル 1997年のIMF経済危機以降、財閥の再編を通して今や韓国を代表する企業グループとなった『サムスングループ』。その中心となる稼ぎ頭のサムスン電子は「選択と集中」戦略のもと半導体や液晶への集中投資が功を奏し、リスクを嫌って投資を怠った日本の電機業界を尻目に快進撃は止まらないようです。他社の良い所をどんどん取り入れ、かつ研究してその上を狙う。後発メーカーとしては賢いやり方ですが、それが今や後発どころか世界のトップランナーに踊り出たのです。(表5参照)

(2)驚異的な利益率
 韓国で電機・電子関連製造業に携わる日系企業の駐在員は多かれ少なかれ、サムスン電子をはじめとするサムスングループと取引しておりその際話題になるのが、同社の利益率の高さです。(表6参照)
 ロイヤリティーを支払い、なおかつコアの部品や製造装置は国外特に日本から依存していてどうして高い利益率を維持できるのかということです。競争の激しい携帯電話ですら営業利益率が15%もあることは、日系企業では到底理解ができない水準だそうです。
 下請けや部材メーカーの中にはサムスンを神のように崇め、取引できることを名誉と思うあまり 激しい要求にも大赤字で受け入れる企業もあるかもしれません。しかし一時的には業績が改善されても、サムスンが過酷な要求を押し続けたら下請け業者は競争力を失い、長期的には継続が困難なものとなるでしょう。
 役員のヘリコプターでの国内移動、一般企業では夢のような年末年始の賞与インセンティブ支給、海外研修制度や、ヘッドハンティングで優秀な海外エンジニアの一本釣りなどの莫大な諸費用に加え、労働組合がないほど手厚い人件費や福利厚生費を支払ってもあり余る利益はどこから捻出されているのかといった素朴な疑問が生まれてきます。
日韓で逆転した世界シェア(DRAM)・サムスン電子の主要部門別売上(2004年)
(3)意思決定のスピードと人材
世界第2位のシェアを誇るサムスン携帯電話 サムスンが成功した要因のうち最も多く聞かれることは、意思決定のスピードの速さです。サムスンとのビジネスを経験している日系企業駐在員の方から話を伺うと、売買交渉をする際にはサムスンの課長クラスが出てきて商談をその場で即決していくそうです。
 一方、日系企業との交渉では、ある程度の価格交渉の枠を越えると日系企業は一旦会社に持ち帰るそうです。このように、『サムスンは大企業にもかかわらず意思決定において課長クラスにある一定の権限を任せているためスピードがある』と感じる人が多いようです。
 韓国の国民性に「せっかちさ」がありますが、それを象徴する言葉として「パリパリ(急いで急いで)文化」というものがあります。あまり評判のいいものではないのですが、半導体や液晶といった速いサイクルで決断を繰り返さなくてはならないタイプの産業には、石橋をたたいて渡るよりは相性はよいと言えるでしょう。
 次に、サムスンが成功した要因に挙げられるのが人材の優秀さです。熱心に世界中から優秀な人材を集めていることで定評がありますが、それだけでなく全社員のモチベーションの高さに定評があると言われています。サムスン電子のモチベーションの高さは同社社員に言わせると、非常に公平な評価制度により経営層まで実力主義が徹底していて働き甲斐があるということです。
 年俸制と徹底した能力給を採り冷たいようではありますが、できる人には思いきり処遇し、その差別化が社員のモチベーションの高さにつながり、それが企業の活性化を生み、社内人事・労務管理が上手く運営されているようです。
デジタル機器を展示するサムスン名品館
(4)ベンチマークするのはトヨタ
 利益が1兆円を越えたにもかかわらず、サムスン電子のCEOはさらに危機感を強めていると言います。社員の間に慢心が広がるといった危機感は当然としても、意思決定をはじめ部材調達から商品販売までのサプライチェーンのスピードなど課題が多いと指摘しています。
 このサムスンがベンチマークしているのはトヨタです。日本で生産効率第一位、世界でも純利益が1兆円を超えたのは日本ではトヨタだけなのですから当然なのかもしれません。
 実際にトヨタとサムスンの両方の工場を見学した人の話では、サムスンの工場の生産ラインはトヨタの工場とほぼ同じ方式を取っていたことに感心したそうです。
 
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