トップ 西日本シティビルプロジェクト 福岡地所と大成建設が語る『西日本シティビル』の役割とデザインの真意とは?

福岡地所と大成建設が語る『西日本シティビル』の役割とデザインの真意とは?

左から福岡地所 開発事業二部 村山智紀 部長・大成建設 工藤秀樹 作業所長、宮田哲治 プロジェクト担当部長
(大成建設のお二人の肩書は建設プロジェクト進行時のものです)

博多駅から一歩外へ出ると、視界の先に見慣れない輪郭が現れるようになった。ジグザグとした形の外壁、低層部を包む曲線の外装……。その建物の外観は、すでに街の空気を変えようとしている。「西日本シティビル」はいったい何を目指し、誰の手によって創り上げられたのか。プロジェクトを担う福岡地所と、施工を手がけた大成建設のキーパーソンに話を聞いた。

博多駅から一歩外へ出ると、視界の先に見慣れない輪郭が現れるようになった。ジグザグとした形の外壁、低層部を包む曲線の外装……。その建物の外観は、すでに街の空気を変えようとしている。「西日本シティビル」はいったい何を目指し、誰の手によって創り上げられたのか。プロジェクトを担う福岡地所と、施工を手がけた大成建設のキーパーソンに話を聞いた。

博多駅前に生まれた新しい顔
「西日本シティビル」とは

「西日本シティビル」は西日本シティ銀行と福岡地所の共同プロジェクトで建設された。地上14階・地下4階、延床面積約75,699㎡(約22,899坪)という規模を誇るこの複合ビルは、2026年7月21日の開業を予定している。

フロア構成を見ると、その多機能ぶりがうかがえる。地下2階には最大約400席の多機能ホール「NCBホール」、地下1階・1階には商業ゾーン、2階には西日本シティ銀行・西日本シティTT証券の本店営業部とNCBギャラリー、3〜9階には西日本フィナンシャルホールディングスグループの執務フロア、そして9〜13階には賃貸オフィスフロアが並ぶ。さらに敷地北東側には大規模立体広場「コネクティッドコア」を備え、博多駅とは地下で直結する。

このビルが生まれた背景には、「博多コネクティッド」という都市政策がある。地下鉄七隈線延伸や、はかた駅前通り再整備などの交通基盤整備とあわせ、容積率の規制緩和によって先進的なビルへの建替えと歩行者ネットワークの拡大を促す福岡市のプロジェクトだ。西日本シティビルはその象徴的な一棟として、「博多駅前のにぎわいを周辺につなげる回遊のハブ」を目指している。

福岡地所が西日本シティビルに込めた
「街づくりの意図」

福岡地所 開発事業二部 部長の村山智紀さんは「西日本シティビル」のプロジェクトを担う中心人物の一人だ。

福岡都心の再開発企画と実行を担う同部では、施設整備から用途の組み合わせ、にぎわいの企画・開発、そして運営まで一貫して手がけることで地域を活性化していくことが仕事の本質だという。

「弊社のミッションは『福岡をおもしろくする』ということです。物理的な施設づくりだけでなく、人の流れやにぎわいをつくる企画、スタートアップ支援など新しい取組みとも連携しながら、街の循環をつくっていきたいと考えています」

村山さんが「西日本シティビル」で特にこだわったのは「広場」と「動線」の設計だ。行政のまちづくり方針とも連動しながら、市民が集えるイベント広場「コネクティッドコア」を設け、歩いていて「次は何があるんだろう」という期待感が持続するような連続性を意識した。

地上広場「コネクティッドコア」

「地上部分を広めにセットバックして余白を確保しています。季節感ある使われ方も狙いのひとつです。緑についても、市のグリーン施策と整合させながら壁面緑化や柱の緑化、植栽一体型ベンチを取り入れています。都市の中に『ほっとする場所』をつくりたいと考えています」

博多駅から明治公園へと続く通り沿いには、街路樹を組み合わせることで公園まで連なる緑の空間が生まれる。これは福岡市の「都心の森1万本プロジェクト」の趣旨とも響き合う取組みだ。

商業とホールの連携も、この建物の重要な設計思想だ。1階・地下1階の商業ゾーンと、「コネクティッドコア」を介して「NCBホール」が連動することで、人の流れとにぎわいの循環を生もうとしている。

「『NCBホール』は文化発信の拠点として重要な役割を持っています。広場でのイベントや情報発信がきっかけになって商業へつながる流れも生まれる。市民が気軽に集まれる場になることで、文化的な価値向上にも寄与できると思っています」

NCBホール

オフィスについても、単なる執務空間以上の戦略的な意味がある。賃貸オフィスフロアは博多駅前エリア最大級の基準階面積を誇り、最小40坪から最大1,188坪まで柔軟な区画形成が可能だ。

「ワンフロアで1,000坪超の面積を確保できることは希少価値が高い。コロナ禍以降、対面業務や拠点集約を重視する動きが強まっており、大企業の拠点集約ニーズをしっかり受け止められる物件になり得ると考えています」

かたちに込められた思想とは?
デザインと空間構成の狙い

外観を一目見れば、並のビルではないことがわかる。ジグザグとした形の外壁、9階部分に大きく開いた開口部、低層部を包む曲線的なリボン状の外装。デンマークの建築事務所・3XN Architectsが日本初のプロジェクトとしてデザインを手がけたこの建物は、従来の博多駅前の風景を鮮やかに刷新する。

シンボルマークでさえも、ジグザグとした外壁や9階の開口部をモチーフとして視覚的に建物を印象づけるデザインとなっており、「覚えやすさ」への徹底したこだわりが見える。村山さんは、外観の「丸みと柔らかさ」に込めた意図をこう説明する。

シンボルマーク

「外観に丸みを持たせることで、周辺を歩く人の流れをやわらかく受け止めるゲートウェイとしての役割を意識しました。博多のシンボルとして、インパクトと親しみやすさのバランスをとることを大切にしました」

さらに、時間帯によって変わる表情も設計段階から意識されたという。朝の青空の下でのコントラスト、夜に内側の灯りが透けて浮かび上がる表情。博多駅の出口を出て最初に目に入る建物のひとつとして、どの時間に訪れても記憶に刻まれる存在であることを目指している。

環境性能という面でも、この建物は高い水準に達している。BELS「ZEB Ready」認証(事務所部分で全国3番目の延床面積、西日本最大規模)、WELL Core ゴールドランク予備認証、LEED ゴールドランク予備認証など、国内外の先進的な環境認証を7種類取得している。

次世代人検知センサー「T-Zone Saver ®」を活用した照明・空調の自動制御により、一次エネルギー消費量を全体で約49%削減する。働きやすさと環境負荷軽減を両立させるこうした取り組みは、「都市の中のほっとする場所」というデザインの意図と、深いところで重なっている。

「自分たちの集大成として恥ずかしくない
建物を」大成建設の技術と現場の工夫

大成建設の工藤秀樹作業所長(左)と宮田哲治プロジェクト担当部長(右)
(お二人の肩書は建設プロジェクト進行時のものです)

美しいデザインは、それを実現する技術と現場の覚悟があってはじめて建物になる。大成建設の宮田哲治プロジェクト担当部長と工藤秀樹作業所長が、施工の最前線を語った。

宮田担当部長がまず挙げたのは、この現場特有の「地理的な制約」だ。

「博多コネクティッドの容積緩和を受け、建物が敷地の4面すべてにギリギリまで建てられています。仮囲いが建物のすぐそこにあるため、建築機械や資材を置く仮設ヤードがほとんど取れない。周辺の歩行者も多く、ボルト一本でも落としたら大変な状況なので、安全を第一にすることが現場全体の最大の使命でした」

街中での作業は慎重を期した

工藤所長もその言葉にうなずく。

「周りを歩いている方にケガをさせてはいけない、というのは毎日考えていたことです。ただ同時に、仕上げの品質にも徹底してこだわりました。お客さまが建物を判断されるのは最終的な仕上げです。塗装がきれいに塗れているか、金物がきれいについているか、そういうところです。働いてくれた職人さんが、完成した建物で報われるように。最後の仕上げまで手を抜かないことが私の仕事だと思って建築プロジェクトに携わりました」

工事中の外壁

デザインの実現という面でも、技術的なチャレンジは枚挙にいとまがない。ジグザグとした形の外壁は角度ごとにタイルの幅が1枚1枚異なり、難しい工程が求められた。

1階・2階の低層部をふわりと包むリボン状の外装は、3Dモデル上で原寸の取り付け部材まで起こし、コンピューター上で展開してからデータを機械に入力して製作するという工程を踏んだ。

工事中の「西日本シティビル」内の斜めの柱

斜め柱の扱いも難度が高かった。宮田担当部長はその解決策をこう振り返る。

「施工中の構造解析は、本社が相当力を入れてやってくれました。通常の構造設計だけでなく、建物を建てていく途中でどんな挙動を示すかをシミュレーションし、それに基づいて施工計画を立てました。斜め柱を設置した段階で建物にどう“ゆがみ”の影響を与えるか、ビルを正しく建てるためにどう設置したらよいか、細かい挙動まで解析しながら進めてきました」

地下通路の博多駅直結工事もまた、難所だった。元々の建物があった時代に接続していた地下通路を、位置をずらしながら再び繋げていく。既存構造との接続、水の浸入対策、エキスパンション(建物の変位を吸収する継ぎ目)の設定。さらにその周辺には、通信、ガス、水道と、あらゆるインフラが密集していた。

博多駅からビルへつながる通路

「工事をするにあたって、大きなプレッシャーがありました」と工藤所長は苦笑する。「通信網の幹線が真横にあって、もし損傷させたら空港まで止まると言われていたんです。『博多駅直結』という言葉は簡単ですが、そこに至るまでの工事は、まったく簡単ではありません」

私たちが当たり前のように使う「駅直結」の一言の裏に、こうした見えない戦いが積み重なっている。宮田担当部長は、この仕事の重さをこう受け止めている。

「『西日本シティビル』の建設は、記録にも記憶にも残る仕事。間違いなくそう思っています。自分たちの集大成として、恥ずかしくない建物を建てられたと思っています」

西日本シティビルが生む「博多の街」の未来

起工式の日(2023年11月)

「西日本シティビル」の開業は、2026年7月21日を予定している。博多駅前の新しい顔が、まもなく街に加わる。

福岡地所の村山さんはその未来をこんな言葉で描く。「駅から濡れずにアクセスできる拠点として、日常的に人が集まる場所になってほしい。働く環境のアップデートや文化的な発信、広場を通した市民の交流など、経済面・文化面の両方で価値を提供できる建物にしたいと思っています」

大成建設の宮田担当部長は「ここが人の集まる拠点になってくれれば」と言い、工藤所長は「待ち合わせに使われる建物になれたら嬉しい。『あのビルの前で』という形で。いつもそこにあるものになってほしい」と笑顔を見せた。

「福岡をおもしろくする」という福岡地所の思想と、「地図に残る仕事。」という大成建設の信念が交わるところに「西日本シティビル」が生まれる。それは単なるランドマークではなく、博多の街が新たな歩みを踏み出す起点になろうとしているのだ。

NCBホール公式サイト

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